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森本太郎

イメージの(へり)──ここにあり、ここではないどこか

MORIMOTO Taro  The Edge of Image −Somewhere Else, Existing Here






キューレーターのコメント

花やろうそく、風景そして人物。森本太郎(1969年生まれ)の絵画の中に描かれているモチーフは、我々が日常生活の中で目にするものばかりです。しかし、構図に見られる対象への肉薄は、ときにその外郭を画面の外に押しやり、鑑賞者が絵に対峙する際に「モチーフの推察」というおこないを促すこともしばしばです。

 画面の中で接し会う色面は、可塑性のあるメディウムを搾り出すことによって引かれた高さ・幅が各々数ミリ程度の線で隔てられ、色が混ざり合うことはありません。この線や色はコンピューターで写真などを解析することによって生み出されたものですが、時にそれは焦点を結ぶことができないほどに眼を近づけたときの対象の姿を思わせたり、あるいはフォルムが入れ子状に表現された部分では等高線付きの地図を思わせたりするなど、我々はその鑑賞課程において、自らの様々な視覚体験を想起することになります。鑑賞者と画面の物理的な「距離」はほぼ一定である筈なのに、イメージのかたちによって「距離感」は次々と変容してゆく−そんな面白さが、森本の作品にはあるのではないでしょうか。

 制作プロセスにおいてカメラにより記録されたイメージやコンピューターを用いながら、完成した絵画に確固とした繊細さと力強さが備えられているのは、その仕事が作家の優れた色彩感覚と丁寧な手業に支えられているからです。その一面を見ることができるのがキャンバスの側面。そこには画布上では交わりあうことがなかった色たちが流れ落ちてきて出会うことにより、魅力的な模様を綾なしています。それは不規則ではありますが、時おりリズミカルな響きを見せ、やきものの世界において古代から愛されてきた、釉薬を垂らすことにより表現された文様を思わせます。ストイックな制御のもとに生み出された絵画の表面にくらべれば、ここは多分に偶然性を含む場所ですが、その美しい眺めは、作品の中に潜む作家のちからを我々に伝えてくれます。

 本展では、ギャラリーのある上野に取材した新作も展示いたします。近代以降、多くの芸術家・文人たちが集った場所で採取されたモチーフは、どのような姿で画布の上に顕われるのでしょうか。ぜひご期待ください。

山内舞子(美術評論家)

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